東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻 母性看護学・助産学分野

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研究紹介&研究報告

エルサルバドル国立女性病院における科学的根拠に基づいた人間的出産プロジェクト

JICA草の根技術協力事業
エルサルバドル国立女性病院における科学的根拠に基づいた人間的出産プロジェクト

写真協力: elsalvador.com/El Diario de Hoy, El Períodico de El Salvador

事業名

(日)エルサルバドル国立女性病院における科学的根拠に基づいた人間的出産プロジェクト
(英)Project for Humanized Childbirth based on Scientific Evidence in the National Women’s Hospital
(西)Proyecto de la Atención humanizada del parto basada en la evidencia científica en el Hospital Nacional de la Mujer

協力期間

2017年12月27日~2022年12月26日

相手国機関

  • エルサルバドル保健省
  • エルサルバドル国立女性病院(国内唯一の産婦人科に特化した第3次医療機関)

人間的出産とは

本プロジェクトでは,「人間的出産」を,以下のように捉えています.

  • 人間の自然な営みである分娩を生理学的に捉え直し,過度な医療介入を避けるケア
  • 女性の産む力,赤ちゃんの生まれる力 に敬意を表し,女性と赤ちゃんの力を最大限に活かせるような分娩時のケア

そして,そのようなケアは,出産する女性自身も,出産に関わる医療従事者も,共にエンパワーメントされるような,意識の変革を伴うプロセスであるとも考えています.

背景

本プロジェクトは,ブラジル国セアラ州で実施されたJICA技術協力「家族計画・母子保健プロジェクト(通称,光のプロジェクト)」(1996~2001年)がモデルとなっています.ブラジルのプロジェクトは,人間的出産をコンセプトに出産の医療中心型モデルから女性中心型モデルへのパラダイムシフトを引き起こしました.ブラジルのプロジェクトの影響を受け,現在,多くのラテンアメリカ諸国では,法律や省令の整備を通じて「人間的出産」を推進する動きが広まっています.しかし,各国の「人間的出産」の定義や解釈は,非常に多岐に渡っております.エルサルバドルに法律や省令はまだありませんが,5年間の本プロジェクトを通じて,エルサルバドル人自身が,何が「人間的出産」なのかを自らの言葉で語れるよう,支援していきたいと思います.

なお,ブラジル「光のプロジェクト」で重要な助産ケア・モデルとなったのは,医療行為が法律で禁止されているものの地域に根ざした活動と継続的なケアにより,女性と赤ちゃんの産む力・生まれる力を引き上げ,妊娠・出産に伴うリスクを引き下げてきた日本の開業助産師の助産ケアでした.エルサルバドルのプロジェクトにおいても,日本の助産師が持つ優位性を活かしていく予定です.

目標

プロジェクト目標は,国立女性病院における妊産褥婦・新生児医療サービスが向上することです.エルサルバドル側から提案された具体的な目標は,プロジェクトを通じて国立女性病院で出産する女性が,

  • 自然な出産経過と産後の経過を理解し,
  • 自身の出産経過やケアの意思決定に積極的に関わり,
  • 自然で自発的な出産経過を体験し,
  • 温かみがあり,質が高く,安全な環境でケアを受けることができるようになる

ことです.そして,

  • 妊産婦の出産満足度と幸福感の向上のために必要なケアや技術を標準的な人間的出産のケア・モデルとし,エルサルバドル国内の他施設へ波及させる

ことも視野に入れています.

国立女性病院の妊産褥婦・新生児に対する人間的なケアが標準的ケアとして提供されるようになり,このケア・モデルがエルサルバドル国内に波及することで,最終的には,エルサルバドル国の全ての妊産褥婦と新生児の健康状態が改善されることを目指しています.

期待される成果

  1. 国立女性病院の医療従事者の科学的根拠に基づいた出産の生理学的プロセスに関する知識が強化される.
  2. 国立女性病院において,妊産褥婦・新生児への人間的なケアが,標準的ケアとして提供される.
  3. 妊産婦の出産満足度と幸福感の向上のために必要なプロセスや技術が,標準的な人間的出産のケア・モデルとして,エルサルバドル国内の他施設へ波及する.

プロジェクト評価と効果の検証

科学的根拠に基づいた人間的出産の導入により,どのように妊産褥婦,新生児医療・ケアの質が向上し,どのように全国へ波及されるかは,ベースライン調査,中間評価,終了時評価を通じて,評価していきます.その結果は,学術論文として取りまとめ,世界中に発信していく予定です.

プロジェクトの枠組み

プロジェクトの詳細は,プロジェクト・デザイン・マトリックスをご覧ください.⇒ プロジェクト・デザイン・マトリックス

プロジェクト・ニュース

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